全出版人大会

出版社・取次・印刷・製紙・製本・書店など、
まさに「全出版人」が一同に集い、出版の未来を考える。

毎年5月、出版社・取次・印刷・製紙・製本・書店など、まさに「全出版人」が一同に集い、全出版人大会を開催しています。内閣総理大臣や文部科学大臣、文化庁長官、国立国会図書館長、国会議員、関係省庁の方々を来賓としてお招きした席上において、会員社から選ばれた大会委員長が「大会声明」を読上げ採択され、「出版を通じて社会や文化の発展に貢献しよう」と全出版人が未来へ向け決意をあらたにする場です。

あわせて、各社・団体で働いている長寿者(70歳以上の役員対象)の祝賀、永年勤続者(勤続15年以上の従業員対象)の表彰が行なわれ、表彰状や記念品が贈られます。
各社および各団体の代表、役員をはじめとする列席者による式典終了後は、全出版人が勢揃いする懇親会へとつづき、相互の交流親睦を深め、「出版の未来」をともに考える貴重な機会となっています。
主催: 一般財団法人日本出版クラブ

協賛:日本書籍出版協会 日本雑誌協会 教科書協会 出版梓会 自然科学書協会 読書推進運動協議会 文化産業信用組合 日本出版取次協会 日本書店商業組合連合会 印刷工業会 東京都印刷工業組合 東京都製本工業組合 日本製紙連合会


 2026年5月7日木曜日、ホテルニューオータニ(東京都千代田区紀尾井町)にて、約400名の出版人が集い、第65回全出版人大会が開催されました。  大会委員長は鉃尾周一氏(マガジンハウス社長、日本出版クラブ理事)、講演は作家で日本大学理事長、日本文藝家協会理事長(ともに当時)の林真理子氏にお願いしました。出席者には、村上隆氏のアートワークによる風呂敷が記念品として渡されました。  また、ご来賓として文化庁長官・伊藤学司氏、国会図書館長・倉田敬子氏のご臨席を賜り、ご祝辞を頂戴しました。

会場には来賓はじめ約400名の出版人が一堂に会した

[大会声明]

日本カルチャーを取り巻く世界の空気は、明らかに変わりました。
その先鞭をつけたのは、言うまでもなく漫画です。物語の力、キャラクターの魅力、そしてそこに描かれる唯一無二の世界観が、国境を越え、世代を越え、多くの読者に受け入れられてきまし
た。その流れは、音楽、映画、アート、ファッションへと広がり、いま「Japan」という言葉は、独自のカルチャーとしての信頼を伴って語られるようになっています。
そして今、村上春樹氏だけでなく、王谷晶氏、川上未映子氏、村田沙耶香氏、柚木麻子氏をはじめ、多くの日本の作家の作品が言葉の壁を超えて世界で語られることは、決して特別な出来事ではなくなりました。日本の出版カルチャーが生み出す熱量は、客観的に見ても、いま、これ以上ない高まりを見せていると言ってよいでしょう。

大会声明を読み上げる鉃尾周一
第65回全出版人大会委員長

直視すべき国内の課題と「海外」という選択肢

一方で、国内に目を転じれば、私たちは厳しい現実に直面しています。若い世代の本離れ、書店の減少、資材と物流経費の高騰。私たちが向き合うべき課題は、決して少なくありません。
世界からの大きな評価と、国内での構造的な課題。このギャップを埋めるためには、各問題に真摯に向き合っていくことはもちろん大切ですが、作り手だけでなく書店、流通、制作、全て含めた日本の出版業界全体が、海外に目を向けてみることも、一つの転換点になるのではないでし
ょうか?

出版が生み出すコンテンツの力

経済産業省のデータによれば、日本の「コンテンツ産業」の海外売上は、この10年間で約3倍に成長、2023年には約5.8兆円に達し、すでに鉄鋼や半導体の輸出額を超えました。政府はこれを「基幹産業」と位置づけ、2033年までに、最大の輸出産業である自動車産業に匹敵する「20兆円規模」へ引き上げるという高い目標を掲げています。
 資源を持たないわが国にとって、言葉や物語、キャラクターといった、いわば「無から価値を生み、育て、多角的に展開できる可能性を秘めたコンテンツ」は、新しい時代を開く最も重要な資源です。出版は、その源流にあります。漫画、小説、ノンフィクション、雑誌。それらは今、映像や舞台、グッズ、体験型イベントへと広がる、あらゆるエンタテインメントの出発点となっています。

書店の再生 英米にみる「3つのC」

 国内では、書店の減少が嘆かれる一方で、海外では驚くべき逆転現象も起きています。例えばアメリカでは、長らく「書店はオンラインに駆逐される」と言われてきましたが、近年は独立系書店を中心に店舗数が増加しています。全米の独立系書店による団体、ABAの報告によれば、会員数は右肩上がりで、2024年だけでも300店舗以上の独立系書店が新たにオープンしました。
 なぜ、彼らは成功したのか。ハーバード・ビジネス・スクールのライアン・ラファエリ准教授は、この成功を「3つのC」という言葉で説明しています。
一つ目は、Curation (キュレーション)。アルゴリズムによる推奨ではなく、信頼できる書店員の「目利き」による選書が、改めて評価されています。二つ目は、Community(コミュニティ)。書店が単に本を売る場ではなく、地域の文化拠点(サードプレイス)としての役割を強めています。三つ目は、Convening (コンビーニング:集いの場)。デジタル疲れを感じる人々にとって、紙の本の感触や共通の趣味を持つ人との交流は、代替できない価値となっています。

日本の可能性と、これからの連帯

 日本でも、こうした再生の息吹はすでに現れています。海外10カ国47店舗に拠点を広げ、日本の出版文化を「体験」と共に輸出し続けている紀伊國屋書店の姿は、私たちの進むべき道を照らしています。また、開業のハードルを大胆に下げることで、開始一年で全国に50以上の新しい本屋を生み出した『HONYAL (ホンヤル)』。「本と過ごす豊かな体験」を再定義し、新しい読者層を開拓している『文喫(ぶんきつ)』。
 視点を変えれば、私たちが右肩上がりに転じるチャンスは、決して少なくありません。出版社はもちろん、書店、取次、印刷など出版に関わるすべての関係者が、日本の優れたコンテンツを海外に輸出するともに、海外の成功例をヒントに立場や役割の違いを超えて知恵を出し合い、連携していくことが欠かせないのではないでしょうか。
 守るべきものは守りながら、変えるべき構造は、少しずつでも確実に変えていく。国内の基盤を大切に守りながら、同時に世界という広大な市場にチャレンジし、その肥沃な果実が、さらに国内の出版マーケットを活性化させる。本日、この全出版人大会が、そうした「好循環」を作り出すための、確かな節目となることを願っています。
 本日、皆さまへお配りした記念品は、世界的なアーティストの村上隆さんが歌川広重の世界を現代に甦らせた作品をモチーフにした風呂敷です。伝統的な日本の文化を、世界中で愛される現代のアートとして甦らせた村上さんのように、私たちの出版文化もまた、より広く、より深く、世界へと広がっていけると信じています。
 日本の出版文化が持つ力をもう一度信じ、次の時代へつなぐ。その第一歩を、今日、ここから共に踏み出しましょう。
2026年5月7日

全出版人大会 大会委員長 鉃尾周一

挨拶する野間省伸
日本出版クラブ会長

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